土地に関する法規

家を建てられる土地、建てられない土地

家はどこにでも建てられるわけではありません。土地は、都市計画を定め、計画的に実施するための「都市計画区域」と、それ以外の「都市計画区域外」に分けられています。
さらに、この都市計画区域も、表のように3種類に線引きされています。この内、原則的に家が建てられるのは「市街化区域」だけですが、用途地域で制限される「土地の使い道」によっては、この市街化区域でも家を建てられない場合があるので注意が必要です。
市街化区域既に市街地になっている、もしくは概ね10年以内に市街地にする予定がある、優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。用途地域が定められる。
市街化調整区域市街化を抑制すべき区域(山林地帯や農地など)。
用途地域は定められない。
未線引都市計画区域上記の2区域にまだ分けられていない(線引きされていない)区域。用途地域は定められない。
都市計画区域内の線引き

用途地域について

用途地域にはそれぞれ、どの位の規模の建築物が建てられるかの制限が定められています。それを示すのが「建ぺい率」と「容積率」で、用途地域の区分と都市計画によって規定されています。

・用途地域
人がたくさん住む地域には、街の無秩序化を防ぐためにも、ある程度の「ルール」が必要になります。そこで、ふさわしい場所にふさわしい建物を建てるために定められる規制が「用途地域」です。
この用途地域は「都市計画区域」の「市街化区域」に対してのみ定められるもので、「住居系」「商業系」「工業系」の3つに大きく分けられます。細かくは13種類の用途地域がありますが、中には住宅を建てられない「工業専用地域」といったものもありますので、土地を購入する際には注意が必要です。

・建ぺい率
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のこと。つまり「敷地に対してどれくらいの建坪の家が建てられるか」ということです。用途地域ごとに異なる制限があり(下表参照)、住居系の用途地域は建ぺい率が比較的低い傾向にあります。また、敷地が角地にある場合は、都市計画で定めた建ぺい率に10%を加えられます。個別の建ぺい率は、不動産広告のほか、市町村役場の建築指導課、都市整備課で確認することもできます。

・容積率
容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のこと。つまり「敷地の広さに対して、どれくらいのボリューム(床面積)の家を建てられるか」の決まりです。用途地域によってある程度の範囲で制限されています(下表参照)が、同じ用途地域でも土地によって規定の容積率は異なります。個々の土地については、不動産広告のほか、市町村役場の建築指導課、都市整備課でも確認することができます。

[ 用途地域 住居系 ]

第一種低層住居専用地域小・中学校や店舗併用住宅はあるが、低層住宅中心の静かな住環境
第二種低層住居専用地域上記のほか、150m2以内の店舗などが建つ、比較的静かな住環境
第一種中高層住居専用地域住宅のほか、病院や大学、500m2までの店舗も建てられる、マンションが中心の地域
第二種中高層住居専用地域住宅のほか、病院や大学、1,500m2までの店舗も建てられる、マンションが中心の地域
第一種住居地域住宅のほか、3,000m2までのホテルやボウリング場なども建てられるため、住人以外の人通りが増える
第二種住居地域上記のほか、10,000m2までのパチンコ店、カラオケボックスなどの娯楽施設も建てられる
準住居地域自動車ショールームなどが住居と共存する、大通り沿いなどの地域
田園住居地域住居のほか、150m2以内の店舗や300m2まで農業用施設が建てられる、住宅と農地が調和した地域

[ 用途地域 商業系 ]

近隣商業地域  事務所や店舗が中心で、客席200m2未満の劇場も建つが、住宅も建てられる
商業地域映画館や銀行、デパート、飲食店など主に店舗や事務所の利便性の増進を図る地域。
また、用途地域の中で唯一、風俗営業店も認められている。住宅も建てられるが、住環境は良くない場合が多い

[ 用途地域 工業系 ]

準工業地域火災や公害など、危険や環境悪化の可能性が少ない工場が中心の地域。住宅も建てられる
工業地域危険性や環境悪化の恐れが大きい工場も建築できる地域。住宅は建てられるが住環境は良くない場合が多い
工業専用地域  大規模な工場が集積している地域で、用途地域の中で唯一、住宅を建てることができない

[ 用途地域別 建ぺい率・容積率一覧表 ]

用途地域建ぺい率(%)容積率(%)
第一種低層住居専用地域30、40、50、60のうち都市計画で定める割合50、60、80、100、150、200のうち都市計画で定める割合
第二種低層住居専用地域30、40、50、60のうち都市計画で定める割合50、60、80、100、150、200のうち都市計画で定める割合
第一種中高層住居専用地域30、40、50、60のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400、500のうち都市計画で定める割合
第ニ種中高層住居専用地域30、40、50、60のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400、500のうち都市計画で定める割合
第一種住居地域50、60、80のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400、500のうち都市計画で定める割合
第ニ種住居地域50、60、80のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400、500のうち都市計画で定める割合
準住居地域50、60、80のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400、500のうち都市計画で定める割合
田園住居地域30、40、50、60のうち都市計画で定める割合50、60、80、100、150、200のうち都市計画で定める割合
近隣商業地域60、80のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400、500のうち都市計画で定める割合
商業地域80200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,100、
1,200、1,300のうち都市計画で定める割合
準工業地域50、60、80のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400、500のうち都市計画で定める割合
工業地域50、60のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400のうち都市計画で定める割合
工業専用地域30、40、50、60のうち都市計画で定める割合100、150、200、300、400のうち都市計画で定める割合
用途地域の指定のない区域30、40、50、60、70のうち特定行政庁が都市計画審議会の議を経て定める割合50、80、100、200、300、400のうち特定行政庁が都市計画審議会の議を経て定める割合

押さえておきたい法規

・接道義務
新しく家を建てる場合、消火活動や災害避難に支障を来さないように、土地は建築基準法で規定する一定の広さを持った道路に接していなければなりません。これを「接道義務」と言い、原則的に幅4m以上の道路に土地が2m以上接している必要があります。
もし、購入した土地が道路に接していないと、建築主は私道を設けて、特定行政庁(一般的には市長など)から道路の位置指定を受けなければなりません。いわゆる「みなし道路」です。これにより接道義務の条件を満たしていることになり、家を建てることができるというわけです。

・セットバック
土地が接している道路の幅が4mに満たない場合、道路の中心線から4mの範囲まで、敷地を後退させなければなりません。これを「セットバック」(物件広告ではSBと表記されることも)と言い、「接道義務」同様に消火活動や災害避難に支障をきたさないための決まりです。
さらに、稀なケースですが、道路の反対側が川などでセットバックできない場合は、反対側で不足する分の幅もこちら側で後退させなければなりません。また、後退させた分の土地は道路状に保っておく義務があり、土地の所有者でも別の用途に使うことはできません。